「クラスの男の子に恋をした」1982.6.23.
6月23日(水)
私ね、最近、千春しか好きじゃなかったのにね……クラスの子に恋をしたの。
ううん、優しいとか、どこが好きとか、そんなんじゃないの。なんだか気になってしかたがなくて、気がつくとあいつの夢まで見てた。あんなやつ、いいやつじゃない、やめろやめろって心の中で声が聞こえるけど、恋しちゃったみたい。だいぶキザなところがあるけど、先生にさされて教科書を読む時はなかなかかわいいしゃべり方だし、それにおどろいたことにけっこう授業中は静かにしてて、熱心に聞いてるときが多い。吉マン(注:先生)には反抗するけどね。
横顔と正面からの顔がだいぶ違います。顔はいいです。でも……ま~い~や。
あっ、そうそうおもしろいこと思い出した。1年のとき、サクラが数ヶ月くらい鈴木(今の山口)を好きだったことがあるんだよ~
なんと、私より背が高いのです!ちょっとだけ、でもこんなの初めて~
字はだいぶきれい。班ノートの自己紹介を読んだんだけど、誕生日は忘れてしまった(だって、そのときは恋してなかったんだもん)。
情報としては、元北山小で、去年は1年8組「鈴木」修二だったんだけど、両親が離婚してお母さんの名前「山口」になったという話。
初めて山口のことを日記に書いたのが4月20日。5月13日に初めて、私がみんなに「理科のノート先生に持ってくよ~もうありませんか~?」と言ったら、山口が「は~い、ありますよ~」って。初めて会話をしたの。そのあとで、一回「2番どうなった?」と言われ、あと「うそ、28問も出るの!」と言われた。過去に、この3回の会話。
そして今日。朝の学活のときだったと思います。
「おい、おい、昨日おまえ、俺んちに電話してこなかった?」
始めは私、気がつかない。まさか私に話しかけてるなんて思わないもの。
「おい!」
「え?してない」まっさか、するわけないじゃん!!
「ほんと~?おっかしいな~妹が出たんだけど、なんか班の用事とかで。『ひ』がつくやつだったって言うんだけど……。」
「え~なんで~私してないヨ~」
……こんな会話を数秒。これが今まででいちばん長かったな。実にさりげなく答えたんだけど、胸はドキドキでした。
それに、給食の時間、及川とニコニコおしゃべりする山口の目がチラッとこっちを向きました。だから、今日一日たまらなくうれしかった~~~と言いたかった。本当にこう書けると思ってた。でも書けませんでした。
そうじの時です。机を下げて、さてふきおわったという時です。
山口が実にさりげなく、「先生、俺、ひっこすよ」と言ったのです。私の胸の中で、悲しみはどんどんふくれ上がっていきました。
わ~~ん、ひどい。ひどすぎる。悩みに悩んで、やっとつかんだ恋がもうひきさかれてしまうなんて………。
ついにあんなにしゃべれたという 喜び
山口が行ってしまう 悲しみ
もっと早く恋をつかめばよかったという くやしさ
引っこす山口への いかり
↑こんなのどうしようもないけどね↑
林間学校という思い出を作ることができる運命への 感謝
山口のひっこしというニュースを聞いた時の 驚き
そんな重大ニュースにほとんど反応しなかった吉マンの バカ
部活に行ったんだ(注:私は演劇部でした)。体育館で舞台練習だったんだけど、バスケ部(山口所属)もそこにいて。でも山口いなかったの。何回も見直したけどいないの。ハ~~と思ったら、ちこくしてきた。そんで、山口の顔見るたびに沈んでた。おなかこわしたらしくておなか痛いし、悲しいし、ぐったり。え~~ん、千春~~と心の中で泣いていた。帰りも目まいがしたし。
家に帰って、「夕焼け」「忘れたい夜」「炎」「雪化粧」etc 千春のラブソングを聞いてたら、やっぱり泣いてしまった。
気になって気になって、やっぱり好きだった修二。
別れまで仲良くして下さい~~~~~💧
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さあ!いよいよ始まりました。私の片想い歴は非常に長くて、これから延々と続きます。退屈だと思う方は、「片想い」タグをどうぞ飛ばしてお読みください。
私は過去に4人の男性とお付き合いしましたし、うち一人とは結婚もしたのですが、この中2の山口くん(もちろん仮名、以下同様)約2年、高校の岩田くん約2年、大人になってからも、ある外国人男性に1年近く、そして結婚後(別居中を含む)ある男性に3年以上も片想いをしていました。
以前、「恋愛中毒」という小説がありましたが、あの作品を読んだ時、私は正確には「恋愛感情依存症」「男性依存症」ではないかと思いました。そして私も多分にその傾向がありますが、私の場合は身の程知らずな、まったく相手にされていない人をしつこく想い続け、時には変な行動に出るというものでした。このせいで私は、人生のかなりの時間を無駄に過ごしてしまったような気がしています。
その間にもんもんと書き綴った日記など、私が急死でもして遺品整理の際に読まれたとしたら大変なので、さっさと処分してしまえばいいのですが。なんとなくそれも惜しくて、今こうして匿名でブログに書き写しています。
でもあまりに長くて退屈なので、できるだけ割愛するつもりです。何より、いつまで生きられるか分からないのに、こんなもの悠長に書き写していたら10年か20年、すぐにたってしまうでしょう。
それにしても、「恋をつかむ」って一体どういうことでしょう。自分の気持ちに気づいただけの話なのに、まるで成就してしまったかのような言い方をして、恋する自分に酔っているだけというのが、なんとも呆れます。
そのもとになる、家庭環境や持って生まれた性格というものがあったにしろ、すべてはこの日から始まったのだと思うと、なんともいえない複雑な感情になります。
ちなみに、50歳を過ぎた今、ようやく完治しました。もういい加減こんな過ちは犯さないだろうと自分では思っています。